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pd note 20200722 | 制作ノート:流線形『シティミュージック』復刻に関するアレやコレ

こんばんは、ものすごくご無沙汰していますが『プロダクション・デシネ』のDです。DはディレクターのDなのですが、基本的に制作工程も雑務も全部Dがやるので、Dは”だいたい全部やる人”のDです。すみません、どうでも良い出だしです。このノートの更新、ずいぶん放置していたのですが、その間スロウペースながらも『プロダクション・デシネ』からは何作品かのアナログ化やCDリリースもありました。いずれもセールス的には奮っておりません(きっぱり)が、元々、どうしてもリリースしたいモノだけをリリースしたいレーベルなので仕方ないです。未だに潰れずに存在していることだけが唯一の救いです。

流線形 (Ryusenkei) - シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

さて、そんな久々のpdノート(コラム)は『制作ノート』です。作品の制作に関してのアレやコレを思いつく限り記しておこうと思います。今回は2020年7月23日(木)に全国一斉発売となる、

流線形 (Ryusenkei) – シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

に関しての『制作ノート』です(意外に長くなってしまいました…)。

Contents – 目次

[ことの起こり]
[復刻のきっかけ]
[2004年盤-初盤について]
[2020年盤について]
[マスタリングについて]
[まとめ]

[ことの起こり]

この作品『シティミュージック (City Music)』は2003年の作品です。この当時はCD全盛期なので本作も当初はCDだけでリリースされました(あ、CDとはコンパクトディスクのことですヨw 念の為)。当時、神戸(の三宮町)にあった「ディスク・デシネ」(現在の三軒茶屋の「デシネ・ショップ」)のオーナーさんが作品を大変お気に入りになったそうで、CDを沢山仕入れて販売し始めたのが “ことの起こり” だと思います。ちなみにこの当時まだレーベル『プロダクション・デシネ』は存在していません。また「ディスク・デシネ」さんも開業1年目の新米ショップさんだったそうですが、翌年には大胆にもリリース元の『April Records』さんに「アナログ盤を作りませんか?」と持ちかけます。この当時の状況(この手のサウンドの作品でアナログをリリースしている方は少なかった気が…)を考えると無謀と言わざるを得ないのですが、『April Records』さんも同じようなことを考えていて、この無謀な囁きに興味を持って下さり、なんだかんだで1000枚製造することになりました。『April Records』さんが制作し「ディスク・デシネ」が全国流通(ディストリビューション)を行うという形で、全てデシネサイドで買い取ってぼんやり販売し始めました。( ↓ 2004年の盤がこちら(Dの私物、シュリンク付きの美品ですw))

流線形 (Ryusenkei) - シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

色々と端折って書くと、予想(そもそもの予想っていうのが、この1000枚を5〜10年くらいかけてボチボチと売り切れればラッキーくらいなノリですw)を遥かに上回る反響を頂戴しました。「ディスク・デシネ」さんの在庫分以外の卸流通分は確か2週間くらいで全て在庫切れとなりました。ちなみにこの流通という行為、所謂「卸販売」ですが、ぶっちゃけ利益などほぼございません。右から左なので慈善事業みたいなものです。この当時、アナログの製造や流通に関する経験値やノウハウなどは”ほぼ”なかったので、さらに1000枚追加プレスする勇気もなく、各店舗様の在庫状況を知るヒマもなく、1ヶ月くらいで市場からは姿は消えてしまったような気がします…。

一つ大切なことを記しておくと、この当時“シティポップ”という言葉が一般的に使われていた記憶がありませんw 何となくあるにはあるのですが、それは1970年代〜80年代のガチの作品に対してであって、ネットの検索でもほぼひっかかりのないワードだった気がします。と言うか、ノリ的には”シティ〜”という感じが死語レベルだった気がしないでもないし、今のように80sサウンドが一般的にトレンドとして受けていた記憶もまるでない…w まぁ、そんな訳で当時の作品のインフォメーションの中でも、この“シティポップ”と言うワードはあまり積極的には使わなかった記憶があります(使ったのは使ったケド)。そもそも、そんなキーワードはどうでも良いレベルの音楽のクオリティがあったので必要なかった訳ですね。そんな、16年前の記憶です…。

その後の作品への評価の高まりは…、恐らく皆様の方がお詳しいかと思います。

ポイント
1. 地方の名もないレコ屋として初めてアナログ化企画したのが『シティミュージック (City Music)』だったこと
2. 当時はCD全盛でアナログ盤をリリースしてる日本のインディバンドは割と少なかったこと
3. 制作自体は『April Records』さんにお願いしていたこと
4. “シティポップ”なんてワードは、当時はあまり使われていなかった気がするなぁ

[復刻のきっかけ]

その後、「ディスク・デシネ」からは何作品か企画/流通を手がける作品がリリースされるのですが、その流れでレーベルとしての『プロダクション・デシネ』が設立されました(やっと自社の話が出てきたw)。それが2005年のこと。最初のリリースはなぜか1990年代の英国産インディジャズ、というある意味意外な作品でしたが、その後世界各国の知られざる名作の復刻や同じく知られざる現在のアーティスト、グループをリリースし続けて(一応、倒産せずに)現在に至る訳です。上記の [ことの起こり] がないと、「なんでデシネが流線形リリースしてんだよ?」と、お叱りを受けそうなんですが、実際には、”デシネ”と言う名前で、一介の地方のショップがアナログ盤の企画を始めてしたのが、この

流線形 (Ryusenkei) - シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

流線形 (Ryusenkei) – シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

なんです。なので、一応モノを作ることの”出発点”ではあるんですね。

その後『流線形』は中心人物だったクニモンド瀧口氏のソロユニットという形でさらに進化を遂げて、『Happiness Records』さんに活動の場を移し、『TOKYO SNIPER』、比屋定 篤子さんとの『NATURAL WOMAN』をいう名作を発表しています。皆さまご存知でしょうけど。説明が色々とややこしいので書きませんが、このリリース元のレーベルの違いなんかも『シティミュージック (City Music)』が中々復刻されなかった理由なのかもしれないですね(他人事みたいに書いてますケドw)。当社はわりと、と言うか思いっきりマイペースにふわふわ活動しているので、その間も瀧口氏とはずっと親交がありつつ、『April Records』さんとも色々とたくさんお付き合いさせて頂きつつ、もちろん『Happiness Records』さんからも音源をお借りしたり(昨年、7″シングル化させて頂いた『比屋定 篤子 (Atsuko Hiyajo) – 迷子の言葉 c/w みんなはできた君はできない [PDSP-024]』も最高なので是非)しつつ、しつつ、しつつ、で気づいたら、10数年エアポケットに放り込まれていたのかも知れないのが『シティミュージック (City Music)』のアナログ盤だったような気がしてきた訳です。

たまたま、2017年か2018年?ごろのとあるDJイベントの場で瀧口氏と一緒になった時になんとなくそんな話になって、なんとなくそろそろ復刻をやりますかって方向になって…、なんとなく、なんとなくを繰り返している内に(実際には、色々な紐付けの企画やらなんやらあった気がするんですが割愛…)また数年経って、かなり自然な流れでポッと着地したのが、この2020年7月なのです。そうなんです、なんの狙いもなく、なんとなく打ち合わせながらやってきたら、たまたまこのタイミングになったんですw

ポイント
1. たいしたきっかけはたぶん無かったw = 結構自然な流れで復刻された感あり
2. でも関わった皆さんがそれとなく気にはかけていた
3. まとめ役(当社)がちゃんとやればもっと早く復刻できたんじゃないのかと言う疑惑がある

正直に書くと、恐らく『シティミュージック (City Music)』のアナログって復刻されないのかな?って、待ってくださっていた方ってっ結構いるんじゃないかな?と思うんです…、すみません。たぶん最終的には、3.のせいかもかもしれないですねw

そろそろテクニカルなことについても触れていこうと思います。

[2004年盤-初盤について]

2004年盤(便宜上「初盤」と表記します)は海外(欧州)プレスです。制作に関しては『April Records』さんにお願いしていたので一部記憶が間違っている可能性もありますが、そもそもこの当時、当社にも『April Records』さんにもアナログ盤を作るノウハウというのはほぼ無く、かなり手探りで制作したものです。この当時は海外プレスの代行業者さんも数えるほどしかなく、当時ドイツプレスを謳っていた会社さんも今考えれば「ドイツに近いチェコ」、「ドイツ製の機械を導入」と言う表現をぼんやりさせていただけ、な気もするレベルですw ちなみに、カッティングマシンは世界中どこに行ってもほぼ、ドイツのノイマン社製だと思いますので、今思えばツッコミどころ満載です。でもまぁ、無事に仕上がってきた盤自体は製品としては申し分なく、もちろん今でも十分に楽しんでいただけるモノだと思います。偉そうなことを書くつもりはないのですが、反省点としては、海外プレスゆえにジャケットの色校正がしっかりできなかったこと(かなり濃く色が出ています)、ジャケットの用紙の選択肢が少なくコート紙でなおかつ紙厚が薄かったこと、あと、うっかりしていたのが、シュリンクでシールド(封)されていたことです。元々は帯を付ける気でいたのですが、さすがに全て開封する訳にも行かず、そのまま販売&出荷となりました…。( ↓ 左が2020年盤、右が初盤です。並べると、一目瞭然ですね。)

流線形 (Ryusenkei) - シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

恐らく、この辺りの反省点は昨今初めてレコードを作る方、レコードの制作の経験値が浅い方にとっては同じように悩むポイントで、課題なのではないでしょうか(いつでも気軽にご相談くださいネ)。

ポイント
1. 海外(欧州)プレスでした
2. ジャケットの色見は正解ではありませんw
3. でも製品としては問題ない、良い出来です。格好良く言うと、オリジナル盤ですw

[2020年盤について]

今回の復刻盤は『April Records』さんからライセンスしてもらい(ちなみに『April Records』さんも現在は、レコードの海外プレスの代理店もやっていて、実際には自社で制作することもできたのですが、当社にお任せくださいました。感謝。)、『プロダクション・デシネ』で全行程を担当して制作しました。当レーベル15年のノウハウが詰め込まれています。商品ページでの記載とも被りますが、まず、盤は国産プレスです。

流線形 (Ryusenkei) - シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

ご存知の方もいるかもしれませんが、現在アジアで最も長い実績を持つ「東洋化成」社製です。Dの経験上の話になりますが、これほどサーフィス(盤表面)ノイズの少ないプレスのクオリティを保っている会社は世界中を見渡してもほぼないと思います(Dは、自社製品以外に海外のレーベルさんのアナログプレスのお手伝いも結構しているので、無駄にたくさん世界各社の盤のサンプルなどを聴かせてもらっています…)。盤は通常盤と呼ばれる、一般的な重量のモノを採用しています。またよくある「黒」盤です。いずれも音質面その他の製品としてのクオリティを保つ理由で”意図的”に採用しています。重量盤やカラー盤ではありません。批判じみた内容に取られるといけないので「なぜか?」については書きませんが、当社はよくあるレコードに関する都市伝説の類の話には興味がありません、と言うことです。レコードは現役とはいえ、すでにとても“古い”メディアですので、その物理的な特性、限界値を理解しておくことがとても重要だと考えています。

ジャケットに関しては、厚手のボール紙に印刷した用紙を貼り付けるタイプ=「ティップオン式』、あるいは「A式」と呼ばれるタイプのモノを採用しています。当社の製品では最もスタンダードなタイプです。表面の用紙はマット(ちょっとザラザラ)な質感の上質紙タイプの用紙を採用していますが、これはオリジナルリリースであるCD Ver.のジャケットの用紙の質感に近づけた為です。ので、初盤に比べると色が薄く感じ方もいらっしゃるかしれませんが、逆です。初盤が濃いのですw あと、永らく風合いを楽しんでいただけるように表面はマットなニスで仕上げています(ここは結構重要です)。

流線形 (Ryusenkei) - シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

インサート(歌詞カード)が付属しています。これは初盤には付属しなかったモノで2020年盤で初めて採用されています。シンプルなレイアウト、モノクロですが、ちょっとした愛らしい加工もあるので、是非とも実物でお確かめ下さい。

流線形 (Ryusenkei) - シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

オマケですが、外袋は弊社『プロダクション・デシネ』がオリジナルで製造している、ぴったりサイズの厚手のモノ商品名:PP Sleeve for LP “S/T” 100pcs (LP用外袋/厚め ジャスト “S/Tサイズ” 100枚セット) [PDAC-013])をお付けしています。「東洋化成」社さんのデフォルトの外袋はOPPと呼ばれるタイプのパリパリとした質感のモノですので、弊社の厚手のPP製の外袋は割と豪華だと思います。

流線形 (Ryusenkei) - シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

と言う感じでかなりアップグレードしたのでは?と思います。

ポイント
1. 国産プレスです。通常の黒盤です&重量盤ではないです
2. 厚紙仕様のティップオンジャケットです。色見はこちらが正解で良いと思います
3. インサート(歌詞カード)が付属します

流線形 (Ryusenkei) - シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

続けて、さらにテクニカルなお話を…

[マスタリングについて]

2020年盤に関してはリマスター音源を使用しています。リマスターと言う表現が少し説明しにくいのですが、厳密にはマスターテープを再度起こして、一からマスタリング自体をやり直していますので、正確には”新”マスタリングと言う方が良いかもしれません。マスタリング自体は『プロダクション・デシネ』内の自社スタジオで行なっていますが、恐らく『プロダクション・デシネ』の15年のアナログ制作のキモはここに凝縮していると思います。と言っても、ウンチク話をここで書く必要もないですし、そもそも音楽やその音色は”他の誰かさんの良し悪しの基準”ではなく、”聴く人各人の好み”によるところが大きいと思いますので、是非皆様で実際に聴いて実感してもらって決めていただければと思います。まぁ、これで話が終わっちゃうと身も蓋もない話になってしまうのでちょっとだけ書くと、

まず最初に大切なことを二つ、それは、

1. マスターテープに残された録音(ミックス)の質感を生かすこと

2. 音の大きなレコードを作りたい訳ではナイ、と言うこと

1.に関しては、今回初めてマスターテープを起こした素材(ミックスダウン素材)をDも初めて聴きました。普通、この時点である程度のものが完成しているので、マスタリングでは補正、修正できないことも多いです(録音、ミックスの時点でかなり張り切ってしまったモノは悲しいくらいに難しい…。そもそもマスタリングはサウンドの修正を行う行為ではないと思いますし)。しかし『シティミュージック (City Music)』のマスター音源は幸いなことに素材としては申し分のないモノでした。特に初盤と言うか、元のCDの音源をずっと聴いてきたDとしては嬉しい瞬間でした。多少楽曲によってバラつきはあるものの控えめにまとまったミックスで、何より録音そのものに意図的にアナログな質感があって聴き心地がよいのです。初盤や元のCDのマスタリングが決して悪い訳ではありません。この当時、特にCDのマスタリングに関しては、皆さん(依頼する側)がCD試聴機でのインパクトを意識してか、かなり元気に持ち上げる(正確には潰して持ち上げる)感じの依頼が多く概ね元気なモノが多いですし、元のCDのマスタリングはまさにこう言う感じのパンチ力があります。これはこれで魅力があります。

プロダクション・デシネ』でこの手の作業を行う際は、まずはじっくりをその作品の魅力と素材の特徴を掴んで、なるべく控えめに仕上げたいので、今回もそのポリシーに沿って作業しています。結果についてはすでに製品化されているので、皆さんお聴きの通りですネ。初盤や元のCDと比べる必要は特にないと思いますが、もし、それでもどうしても興味があって比べてみたいなぁ、と思う方がいらっしゃれば、追って8月5日に紙ジャケット仕様で再発売されるCD(この再発CDもマスタリングを担当させていただきました)と、オリジナルのCDの音を比較してみる方がわかりやすい気がします(そもそもレコードで比べるのであれば、初盤を持っていないといけないので、本末転倒だw それにアナログ用マスタリング音源は微妙にメディアの特性に合わせて調整してありますので、あまり制約のないCD用とは微妙に、微妙に違います)。すでに何度も聴き込んるらっしゃる方にとっては、こんな聴き方もなかなか楽しいものかもしれないですね(あくまでも、音楽そのものの魅力をより引き出すために、と言う意味です)、要はそれぞれ別物で2度楽しむくらいの気持ちがあると良い作品がさらに何度でも聴きたくなるような作品になってくれるのでは?と言うことです。

2.に関しては…、そのままですw が、かと言って小さければイイと言う話でもないのです。そもそも「音が大きいとか、小さいとかなに?」って話ですが、例えばどんなメディアであっても再生装置のヴォリューム操作を行わず、一定の音量で色んな音源を聴くと、その音の大小があることが分かるのではないかと思います(実際には音楽のスタイル(ジャンル)や年代、特色、製作者の意向などで違うので一概には言えませんが)。この大小は、実際にレコードの制作の際にある程度、意図的にコントールされることです。通常は目一杯の音量を狙うのかもしれません(”通常”のことはよく知らないケド…)が、これがアナログだとなかなかに判断が難しい。正解があるようで無い感じだと思います、そして「大は小を兼ねない」とも思います。無理やり言うと、レコードの片面に収まる容量の中でベストに収まるところを正確に狙う、と言う感じでしょうか。またこの“ベスト”の基準が、レコード制作者それぞれの希望/観点/意図で決まるものなので難しい。例えば、ダンスミュージック的な音楽では、当然機能性を重視して音の大きなレコードを作りたい方も多いでしょうから、最大音量を突き詰めることが“ベスト”になるかもしれない。他方、製品としての安定性(いわゆる再生環境の影響を受けにくい製品)を“ベスト”としてやや控えめにするのもまた考え方です。そして当然ながら第一に実際に溝に刻まれる音楽のスタイルに見合った音作り、エンジニア視点ではアーティストさんやプロデューサーさんなど(依頼者)の意向はさらに重要だと思います、お仕事ですからねw 技術的にはある程度音を大きくすることは可能(もちろん多少なりとも歪みや変質が生じるので、それをいかに違和感なく処理するか)ですし、多少の無理は効くのですが、レコードは再生環境/装置側の影響を受けやすいメディアだとも思います。レコード針と塩化ビニールの音溝の物理的接触がキモである以上、その組み合わせの幅や環境は、CDプレーヤー(レーザーで信号を読み取る仕組み)などと比してもかなりの違いを生んでしまうものだと思います。Dの個人的な意見としては、これら様々な再生環境においても、例えば1万円ほどのビギナー様向けのプレーヤーでも、DJ用のターンテーブルでも、重厚なベルトドライブの高級モデルでも、安定して音楽の魅力を伝えられるバランス感を保つことが“ベスト”だと思っています。音を詰め込んでしまうことによって生じる音の歪みなどの弊害、環境によっては簡単に針が飛んでしまうような製品(音溝の幅が大きくなってしまい、隣の溝にジャンプしてしまうような状況)は、もはや製品とは呼べないのですから、そう言ったことが起こらない前提の作業の中での”音の大きなレコード”と言うことが大切かと。

とまぁ、やっとテクニカルなことを書き出したところで話の腰を折るようで恐縮ですが、今回の

流線形 (Ryusenkei) – シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

は、『プロダクション・デシネ』の最近のアナログリリースの中では比較的音の”大きな”部類に入る方だと思います。これはもちろん上記の「前提あるの作業の中での”音の大きなレコード”」であり、音楽的な特性を考慮してのことです。マスタリングの話からは逸れますが、例えばディスコ調の美しい弦のアレンジなどはやはり少しでも大きな伸びが欲しいものです。その象徴的な楽曲は「B3. フライデーナイト」かな?と思うのですが、初盤ではA面が3曲、B面が4曲となっている構成を、2020年盤ではA面に4曲、B面は3曲だけと言う構成に変更したのも、ベストのバランス感を保つための方策の一つです(もっと大きな他の理由もありますが)。

流線形 (Ryusenkei) - シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

詳しい方はご存知かと思いますが、レコードは特性上内周へ行くほど音の歪みを生じやすいメディアなので、先に出た、そう言った物理的な特性をよく理解した上で総合的にバランス感を保つことが、“ベスト”に近づくことなのではないかと思っています。

流線形 (Ryusenkei) - シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

なので、こう言った古いメディアであるレコードの制作に際しては、メディアの特性と音楽的な特徴を統括してマスター音源を調整するディレクションをしつつ、マスタリングとカッティング(最も専門的な知識というか、経験値がモノを言う工程じゃ無いかと思います)の橋渡しをしつつ、何より最終的な製品の音色の予測を立て、目指すモノに近づけるのが重要なんですね…。あ、ちょっとうんちく話みたいになってしまった。すみません。

プロダクション・デシネ』の制作&マスタリングに関しては、この辺の工程が全て一括で進行する(外注をしない)ので橋渡しの概念はあまり必要ないのが楽です。あと、ずっと同じカッティングエンジニアさんと仕事をしていると立会い時の意思疎通も素早く無駄なくできますし(それに色々と試させてくださったり、教えてもらえる)、これはプレス工場も同様でしょう。さらに並行して、他社さんの仕事では海外のプレス工場でも同じような工程を進行させるとその違いや良さがより実感できるようになるものです。そしてたぶん、まだまだこれからもっともっと学べる気がします(初盤を作った頃と今では、アナログ盤をプレスできる工場の数も、稼働率も全く違うのです。ホントに当時はアナログは消えゆくメディアだと思っていたので予想もしなかったw)。

長い割に中途半端になってすみません、

ポイント
1. 初盤と2020年盤を比べての良し悪しにはあまり意味は無いかも。それぞれにちゃんと意図があるので。あとはリスナーさんのお好みでしょう
2. そもそものマスターテープの録音がとても良かったんです
3. 音が大きいレコードを作ろうとはしていません。大きな音で聴きたい方は再生装置のヴォリュームで調整を
4.『プロダクション・デシネ』のアナログ作品の中では比較的(あくまでも比較的)大きめの音で作っています
5. 興味があって違いを試してみたい方はCDの方がより分かりやすいです(ただしアナログ用のマスターとは微妙に違います)
6. レコードはとても古いメディアなので、過度な期待はしないでネ

と言うことで。

[まとめ]

久々に、と言うかほぼ初めて位なノリで『制作ノート』を書いてみました(しかも、次回リリース予定の「PDSP-027」のテスト盤をチェックしながらw)。色々と端折ってしまっているし、専門的なことには極力触れないように書いているのでイマイチ分かりにくいかも?ですが。『シティミュージック (City Music)』を初めてアナログ化した時の微かな記憶を辿りつつ、今回16年も経ってやっと復刻された経緯の一部、さらには『プロダクション・デシネ』でアナログ盤を作るときには、(これまた一部ですが)こんなことをやってるんですよ的なことをツラツラと書き記しました。もちろんDの誤りや勘違い、思い込みなどもあるかも知れません。お詳しい方からの反論もあるかも知れませんが、まぁ、そこは特に敵意や悪意を持って書いている訳では無いのでご容赦ください。当然ながらDも大好きな作品です。すでに何百回、下手したらもっと聴いているかもしれない作品を、今回色々と作業をやりながらさらに聴き込んで、可能な限り解体してみて再構築して、さらに「やっぱり良い作品だなぁ〜」と思っている次第です。そんな感じが少しでも伝われば嬉しい限りです。

結論、

流線形 (Ryusenkei) – シティミュージック (City Music) [PDLP-017]

は、名作だと思います。名作万歳、復刻万歳!この場をお借りして、この作品を残してくださった皆様に感謝です、ありがとうございます。そしてもちろん、お買い求めいただいた皆様も本当にありがとうございます。次は流線形 (Ryusenkei) の新作に期待しましょうネ。

D(”だいたい全部やる人”)

P.S. もし許されるのなら、いつか12″の3枚組(か4枚組)、45回転仕様でリリースたいです。どなたか出資してくださいw ものすごく気持ち良い音が鳴る気がするんですよね…

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production dessinee / プロダクション・デシネ』は、2002年に神戸で生まれたセレクトCD/レコードストア『disques dessinee / ディスク・デシネ』(現在の『デシネ・ショップ (dessinee shop)』(東京・三軒茶屋))のレーベル/制作部門として2005年にスタート。世界中から洋邦・新旧・ジャンル、時代を一切問わず、とことんまで選りすぐった、知られざる「良いメロディ、ファンタスティック・サムシング」を世に紹介するのが基本コンセプト。「何度聴いても良いなぁ」と思えるものだけをセレクト&プロデュースしています。「プロダクション・デシネ」にしか出来ない「素敵な何か」を、マイペースで世界に向けて発信し続けています。また、音源のみにとどまらず、デザイン・グッズ、アパレル商品(『ensemble dessinee (アンサンブル・デシネ)』)も発信中。 どうぞ、『production dessinee / プロダクション・デシネ』の今後のリリースにご期待下さい。

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